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TAKUMA INOKUCHI

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by takuma inokuchi

満たしたい何かよりも

満たしたい何かよりも_c0006305_18521828.jpg

自分の中を旅をし、届けたいことを考え、自分のやる意味を考え、
ピアノを触り、少し休んで、プラグインをいじってみて、
翌朝また考えて、全部消して、またピアノを弾いて、CD聞いて、
また消して、ゼロに戻って、夕日見て、また意味から考えて、誰かと飲んで、
迷って、嫌になって、かなり嫌になって、どうしようもなくなって、
また作る。

そして少しずつそのサイクルの間隔を縮めていき、
それが段々と大きな塊になっていくのを感じ、
知らず知らずにそれが集中力に変わってきて、
「もう1歩だけ先に行きたい」という気持ちが、ポッと出てきた頃に、
やっと"何か"なる。


そこから関わる人や、関わりのない人の声にもじっくり耳を傾け、
そして少しずつそのサイクルから距離をとっていき、抜けていき、
やがて誰かの、何かのためのものとして完成していく。


それが僕の仕事の「仕方」――なんだなって、ふと思った。
僕のやり方なんだ。



社会に出てみて、どれだけ自分が頑張っても、
どうしようもならないことや、報われないこともたくさんあることを知った。
努力と思っていたことが、単に独りよがりだったんだと思うことや、
大事な時に、体が言うことを聞かないこともあった。
自分が思った通りの結果にならないことや、
逆に自分が思った通りの結果にしかならないこともたくさんあると知った。


だからこそ、自分の期待以上の結果を残せた時が、本当に満ちる。
昨日は久々に何かが満ちた気がした。
満ちていく"瞬間"に思う、あぁ昨日まで何かが欠けていたんだと。
随分遠いところまで来たんだなと。


でも大切なものは、欠けていたその"何か"じゃなくて、
この何かが、"満ちていく瞬間"そのもの。


昨日まで、欠けていた何かよりも、
明日から、満たしたい何かよりも、
満ちていく"瞬間"に向かって、常に生きていく。
そっちの方が、よっぽど人間らしい。


考えてみれば、当たり前だけど、
そのことを実感できる瞬間って、長い人生の中、本当に数少ない。
いつまでも満ちていくこの"瞬間"を忘れないで、
音楽を作るというこの仕事を続けていこうと、
硬く決意した1日でした。



PS:
昨日、現在制作の空間音楽の中間プレゼンで、試聴会があった。
そこで聞いた自分の曲が、とても自分で作ったように思えない瞬間があって。
それはきっといい意味で、すでに自分と曲との距離感もとれていて、
もうあのサイクルから抜けていたんだなって気付くことができた。

曲について個別に聞かれた時も、自分で驚くくらい考えていたんだなと気付かされた。
結果クライアントにもとても気に入ってもらえて、ボスにもお疲れと言われて、
ホントよかったーという感じ。

まだ残りの曲と、仕上げがあるので、気を緩めずがんばろう。
by takumainokuchi | 2007-03-14 18:45